2014年12月7日日曜日

カスタマージャーニーマップの作り方(CJM)についてまとめてみた

2014年12月7日、日曜日。ちょうど午前2時を回りました。嫁も子供も寝静まり、中学時代の友人が作ったエレクトロニカトラックを聴きながら、ブログを書いています。


カスタマージャーニーマップ(以下、CJM)をつくってみるためのマニュアル
昔からユーザインサイトとかに興味がありまして、その中で最近出会った考え方「カスタマージャーニーマップ」。僕もこいつを作ってみよう、ということで、その前段階として「作り方」をネットで調べてまとめてみました。

――その内容を自分用の「マニュアル代わり」として、本ブログにまとめてみます。

※カスタマージャーニーマップとは?については、前回のブログを参照ください。

そもそも「コンテクスト」が重要
「ジャーニー(旅)」という名称にもあるように、CJMはユーザの感情の動きなど「時系列」に沿って視覚的に表現するモデルです。なので、意思決定のプロセスを定性・定量調査により明らかにし、各段階におけるユーザニーズを掴んで行くことが重要と言えます。

■なぜ「プロセス」を「再定義」する必要があるのか?(AIDMA・AISASとか既にあるじゃん!)
確かにかつては以前から用いられてきた「AIDMAやAISAS」といったフレームで、ユーザの意思決定プロセスで可視化することができていました。

しかし現在、スマホやSNSなどの登場によって様々なチャネルがあり、ユーザとのタッチポイントが従来のフレームだけでは捉えきれなくなってきました。そこで、個別の商品・製品・サービスに応じた「意思決定プロセスの可視化」が求められるになってきたわけです。

・また商材によって「プロセス」が違う
数年に一度しかないようなクルマの購入や保険選びの体験と、毎日消費するような飲食物の購入やニュースの閲覧の体験では、時間軸やサイクルが相当異なります。そのため個別でプロセスを再定義する必要があるわけです。

カスタマージャーニーマップ(以下、CJM)をつくることで得られるメリットとは?
メリットは大きく分けて3つ。

・視野が広がる
・複雑なデータが直感的に把握できる
・施策立案が考えやすくなる

【CJMをつくってみる】フォーマットについて

カスタマージャーニーマップには、定型のフォーマットはなく、自由なフォーマットで利用されていることが多いようです。

しかしながら、

・横軸=時間軸
・縦軸=ユーザーの「行動」「感情」「考え」「タッチポイント(顧客接点)」さらにユーザーの感情の起伏を示す「感情曲線」

を用いることが一般的だということです。

(出典:http://i-plug.co.jp/thinkplatform/ux/16/

■代表的なマップの例
ウェブ担当者フォーラムでは、以下のようなサンプルマップがありました。もちろんすべてがこれに当てはまるわけではないかと思いますが、まずは以下を元に作っていくのが、割と楽なように思います。


(出典:http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2014/03/24/16722

・① 目的・対象 ―― 「Guiding Principles」
UX/CXをデザインするために、商品・サービスを利用する「最も代表的な顧客像」として「ペルソナ」を設定し、行動過程の仮説を検証します。カスタマージャーニーマップを作成する際も同様で、対象となるターゲット像、またその目的やプロセスの範囲などを明確に指定します。これはカスタマージャーニーマップ作成における視点のようなもので、性質の異なるターゲット層がある場合にマップを複数枚作成する必要があります。

・② タッチポイント ―― 「RAIL EUROPE」「DOING」
プロセスの段階によって性質の異なるタッチポイントはたくさん存在します。これらのタッチポイントをフェーズごとにマップ上で整理・提示します。

・③ 顧客行動 ―― 「DOING」
この項目で重要なのは、調査データに基づいた「事実」を記述することです。カスタマージャーニーマップの作成には、臆測ではなく、Webサイトのアクセス解析を始め、ユーザー行動観察調査やインタビュー、アンケート、現場に寄せられた情報といった多様な手段で収集したデータから読み取った行動をパターン化し、図式で分かりやすく表現するのが一般的です。

・④ 思考・感情 ―― 「THINKING」・「FEELING」
カスタマージャーニーマップの一つの特徴としては、定量的なデータだけでなく、定性的なデータも反映されるところにあります。これらの情報からユーザーのインサイトを把握でき、UX/CXデザインにおいて非常に参考になります。

・⑤ 課題・改善点 ―― 「Opportuneties」
マップを作ること自体が目的にならないように大きな意味を持つ項目です。行動や心理から何が見えてくるのか、タッチポイントはそれぞれどう機能しているのか、どこに問題があるのかなどの発見と課題を洗い出し、改善の示唆を記入します。

【CJMをつくってみる】ざっくりとした流れ
■STEP1:顧客の属性をもとに、ペルソナをつくる
自分の身の回りを見渡してみて、仮説として数パターンのペルソナをつくります。

・たとえば旅行者のCJMをつくるとしたら
ファミリーで旅行をする人、一人で旅行をする人、カップル・夫婦で旅行をする人、学生同士で旅行をする人、親子で旅行をする人、女子旅、男子旅、シニア旅など

→「ファミリー旅行」「一人旅」「カップル・夫婦旅行」「親子旅行」「学生旅行」「女子旅」「男子旅」「シニア旅」の8つに分類

(出典:http://www.d2c-smile.com/201408282941

■STEP02:仮説で作った上記ペルソナを元に、プロセスを作ってみる
まずは仮説になるとは思いますが、ペルソナに対して意思決定プロセスを作ってみます。

・たとえば海外旅行者なら
海外旅行のプロセスを「計画前」「計画・情報収集」「予約」「準備・出発・移動」「観光・宿泊」「帰国」という6つに分類してみます。

(出典:http://www.d2c-smile.com/201408282941

■STEP03:アンケート・ヒアリング調査を行う
ここからは実際のユーザに話をきいてみます。方法は2つありまして、「事前のアンケート調査」と「One on oneのヒアリング調査」となります。



(出典:http://www.d2c-smile.com/wordpress/wp-content/uploads/2014/08/20140824-11.jpg

先ほどのプロセス6分類の一つづつに対して、例をつけながら、

・「どんな行動をしますか?」
・「関心があることはなにか?」
・「意識することはなんですか?」

を拡大質問で話をきいていくイメージかと思います。

(でも、「関心」「意識」の違いがちょっと分からないな……。実際のサンプルとかを見てみると、「関心」=「左脳的に損得で考える部分」、「意識」=「右脳的な欲求部分」とい感じだろうか?)

■STEP04:顧客行動の清書
上記のアンケート・ヒアリングの内容を、CJMのフォーマットに落とし込み、清書していきます。

・「ユーザ行動」項目について
ユーザの行動をミクロ的に可視化していく項目で、サンプルでは「サークル」「ライン」などの記号が描かれています。この図形をつくることでユーザの行動がより可視化されます。

・顧客の行動は次の3つのパターンのいずれかで表される。
-時間軸がない行動群(Ongoing, non-linear)
ある目的のために行う時系列に沿わない一定のプロセス

-何かが終わって何かが始まる行動(Linear process)
ある行動が終わって次の行動が始まるプロセス

-時間軸がある行動群(Non-linear, but time based)
ある目的のために行う時系列に沿った一定のプロセス

その中で出てきた「ユーザ課題」に対して、我々ができることをディスカッションしながら決めていくことで「我々のすべきこと・しないこと」があぶりだされてくるようです。

さいごに
いかがでしょうか?調べてみたら、なんとなく行けるような気がして来ました!来週から早速スタートしてみます!

2014年12月4日木曜日

「顧客とつながる『カスタマーエクスペリエンス』」まとめ―宣伝会議2014年1月号より

こんばんは。

今日は宣伝会議2014年1月号より、「カスタマーエクスペリエンス(CX)」について、まとめ記事を書こうと思います。自分の勉強のために。


そもそも「カスタマーエクスペリエンス(CX)」とは?
ITproのこの記によると、

カスタマー・エクスペリエンスは「顧客経験価値」と訳すが、それにしてもモヤっとしていて分かりにくいかもしれない。平たくいうと、「商品・サービスの選定、購入、利用、サポートまでの経験を通じて顧客が感じる価値。小売業であれば、店に行き、出るまでの全体験に満足を与える経営手法」と定義できる。


とされています。

・ポイントは「サービスデザイン」という考え方
顧客に提供されるのはすべてが「コト」であり、「モノ」はその構成要素のひとつに過ぎない。ようは「モノ」ではなく「コト」を優先的に考えることが大事だと言います(p31)。

まぁ、当たり前ですね。でも、いざ発信者になった瞬間、これを忘れてしまう……。イカンイカン。

「カスタマーエクスペリエンス(CX)」というコトバが出てきた背景は?
生活者の購買形式の多様化・複雑化が背景。

具体的には、急速なデジタル端末の普及により、「テレビのリモコンであれこれとチャンネルを切り替えるように、そのときの気分に合わせて情報収集を行っている(p28)」から。

その中で「マーケターに求められる視点は『顧客中心』です。『顧客中心』をもっと具体的に言えば『生活者を深く理解し、その行動に沿ってコミュニケーションの有効性を見極めること』(p28)」がより求められるようになってきました。

「カスタマーエクスペリエンス(CX)」を高めるための考え方
「カスタマーエクスペリエンス」 を高めることを目的に、生活者を深く理解するためにはどんなフレームで物事を考えればいいか?

そのためには「カスタマージャーニー」を考えることだと言います。

カスタマージャーニーでは、どんな生活者がどのように商品・サービスを認知し、関心を持ち、購買に至るのかという一連のプロセスを分析・可視化します。

「カスタマージャーニー」へのアプローチ方法とは?
そのための分析手法はいくつかあるそうで、p30では3つの手法が紹介されています。

■(1)リアルタイム・エクスペリエンス・トラッキング
ユーザに調査テーマに関して感じたことや、実際の行動をスマートフォンで報告してもらう手法。

僕が知っている限りだと、インテージさんがやっている「みんレポ」がそれに当たるのでは、と。 http://minrepo.com/service/about/

■(2)ラボでの行動観察調査
実際にユーザにラボにてwebサイトを利用してもらい、その時の行動を観察する方法。

■(3)エスノグラフィー調査
一定期間ユーザと一緒に過ごす中で行動を観察し、インタビューを行う手法。いわゆる文化人類学のフィールドワークのアプローチが元になっているそうです。

どれも調査方法にもポイントがあります。

それは、ユーザの「意見」に頼らないこと。意見に頼りすぎてしまうと、本当のニーズを見誤る可能性があるそうです。なぜなら人は自分のニーズは言語化できないからです。

「カスタマージャーニー」をつくり→サービス設計に落としこむまで
海外旅行を想定したカスタマージャーニーマップの例(p35)

■STEP(1)ペルソナを定義する
・調査会社などが発表する定量データをもとにユーザをカテゴライズし、カテゴライズされた実際のユーザにヒアリングを行い定量面から具体的に定義します。

■STEP(2)シチュエーションニーズを定義
たとえば海外旅行なら、「計画前」「計画・情報収集」「予約」〜といった具合に、ステージに分類。

そのステージごとにユーザの「関心」「意識」を質問していき、シチュエーションニーズを掴みます。

■STEP(3)マーケティング機会を洗い出す
シチュエーションニーズに対して、どうすればCXを向上できるか?を考えます。

さいごに
CXやカスタマージャーニーを今回少し勉強をしてみて思ったのは、以下の2つ。

■発信者・提供者側のジレンマ
自分のことを振り返ってみても、

「テレビCMで気になった商品はすぐにスマホでググってみる」
「旅行に行くときは、まずはネットで探して、深堀りは『本・雑誌』で行い、さらなる調査はネットの口コミで」

といった具合にタッチポイントが多岐に渡ります。

しかし、発信者・提供者側に立った途端、画一的なユーザの捉え方しかできなくなってしまう。これではいかんなぁ、と。

(まぁ理由は色々あります。『ユーザのタッチポイントを考えすぎると、時間が足りない』とか『そもそも予算がない』とか『webは分かるけど、紙はわからない』とか。そう考えると『なぜ発信者になった瞬間、受信者の気持ちを忘れてしまうのか?』という本質的な問題にぶち当たります)

■業種業界を問わない考え方
CXは顧客中心に据える考え方なので、この技術・感覚を持ってれば、割とどんな業種・業界でも食っていけるなぁ、と。

自分にとって「CX」とかは結構興味がある分野なので、もう少し勉強を進めていくことにします。


2014年11月29日土曜日

プレゼン・Web運用・人生捨てたもんじゃないー「気づきノート」からの引用(1)

おはようございます。

いま時計の針が朝の9:30を指しました。大阪は東大阪/近鉄布施駅前のスターバックスからお届けいたします。


「気づきノート」
僕は5年前くらいから「気づきノート」というのを付けています。これは普段の何気ないネットサーフィン・会話・本の中のコトバを集めたテキストファイルで、当時の自分にとって「ハッとした」キーワードをエバーノートに書き留めています。今日はその中から、2010年頃に書き留めたコトバを放出します。


■「プレゼンテーションにはわくわく感が大切」
セミナー講師をやり始めた時に書き込んだコトバ。プレゼンは内容はもちろん、詰まるところ見る人を飽きさせない「演出」が重要だと気づきました。

■「運用が一番難しい。運用は精神力のみ」
Webの仕事をやり始めた時に気づきを得たコトバ。Webマーケティングと、従来の広告との一番違いを表現するコトバ。

■「読み終わって、人生捨てたもんじゃないな、と思ってもらえればうれしいです」
小説家さんが書いた自分の本の紹介文最後にあったコトバ。

■「メールは30分ごとにしか、見ない!」
メッチャ忙しいベンチャー企業に勤めてた時に書き込んだコトバ。

■「とても上手な文章を書く人がいます。すごいなぁと思います。正直、嫉妬もします。わたしは、文章を書くことはそんなに上手くありません。そのぶん、人間の心のやわらかいところに届くコトバを探したいと思っています」

あるライターさんのコトバ。当時僕もライターで、ライティング力に自信がなく悩んでいた時、「これでいいんだ」とちょっぴり救われたコトバ。

■「仕事のクオリティが低い」
あるクライアントに言われたコトバ。仕事の「クオリティとは?」を考えるようになった一言。

■「ビジネス感覚を身に付ける 」
クリエイター気取りだった自分に「一番足りないもの」を考えた末に出てきたコトバ。世の中は、ビジネス=商売=お金を稼ぐ、という仕組みによって成り立っていると気付かされました。

■「コピーライティングとは、翻訳である」
ライターだった時に出会ったコトバ。ひねり出すのではなく、「企業なり商品なりサービスにもともとある具現化されていない魅力を発見する」ということに気づいたコトバ。

■「『結局、ヒトは何がしたいのだろう』を問い続けよう」
社会人として一人前になるためには?を考えていた時に出会った究極のコトバ。

最後に
いかがでしたでしょうか。今回改めて見なおしましたが、どれもハッとされられるワードばかりでした。もし皆さんにとっても気づきにつながれば嬉しいです。

2014年11月22日土曜日

本とはモノである―新潮社新書「編集者の仕事」柴田光磁

Webの世界にいますと、「こだわり」って薄くなってしまいますよね。 

Webの戦略の基本はいわゆる「PDCA」。とにかく世に出す、そして反応をチェックし、どんどん改善していく。多少乱暴に言いますと「多少、使いにくさがあってもユーザの反応を見てドンドン改善していきゃいいや」という世界です。 

さらには、コンテンツの正確性については、「間違ってても後で修正できるし」的な感覚で作ってしまいがちです(いや、大きな声では言えませんが 笑。特にネットメディアからスタートした若いライターさんとかはどこかでそう思っている人もいなくもないと思う)


編集者の仕事―本の魂は細部に宿る―(新潮新書)[Kindle版]

内容の正確性。美術性。機能性。
ところが、(とても当たり前だけど)印刷して「もの」となった新聞や本や雑誌は直すってことはできません。だからこそ、そのモノづくりには半端無く高い正確性が要求されます。 

また、特に本はお気に入りのペンや時計の様に、「所有物」としての側面がある。つまり、工芸品として美術性や意匠性、更には機能性が求められるわけです。 

そんな本づくりの現場を、新潮社の編集者である筆者が分かりやすく語る本。筆者いわく「本がこれまでよりもっと面白くなる本」ということです。


スピン(文庫本とかにあるシオリの役目を果たすヒモ)について
「新潮文庫は上部をカットせず(「二方断ち、天アンカットと呼ぶ」)スピンを入れています。栞より費用がかかるため、年間数千万部という数字を考えると経済的な負担はかなりのもので、いかにこの細い紐を重視しているかがお分かりいただけるのではないでしょうか」
たとえば電車で本を読んでいて降りる時「スピンも栞もない!」となると、ページのスミを罪悪感を感じながら「グッと」折るしかない。

確かにスピンのある本のほうが、そういう時便利ですよね。こんな便利さを支えるために、企業努力していたとは。なるほど。

「目次」にも作り手のこだわりが
「目次がその本の魅力を伝えない要因は、内容と体裁の面の二つに分けて考えられます。まず、内容。章題や小見出しの言葉がすっきりしていないと、つまり編集者が上手に整理をしていないと、その本の特徴はうまく伝わってこない。」
「体裁も重要。書体の選択や行間のバランスが悪いと、ゴチャゴチャしたしたり締まりが無くなってしまい、途端に魅力が薄れていく」
おお。目次って単なる章題をまとめたページじゃないんですね……。ここにも「少しでも魅力的な本づくりをしよう」という、作り手のこだわりが見られるというわけです。ちなみに目次は通常、編集者がつくるそうです。

校正、畏るべし
校正の役割は
「(1)原稿、すなわち筆者の不備を正す(2)指定、すなわち編集者の不備を正す。(3)組版、すなわち印刷所の不備を正す」
通常、制作の現場では編集や「校正さん」という人がいて、文章の誤りなどをチェクしてくれます。しかしながら、現場の第一線の校正さんは誤字脱字の誤りはもちろん、「表記の統一」「内容の正確さ」「引用元の体裁のチェック」までを行い、極めて正確性の高い状態にチェックを入れてくれます。 

筆者が唸った例では、小説のある主人公が北海道の海岸で北斗七星を見るシーンに対して、「この時期にこの場所からは見えないハズです」といったチェックが戻ってきたそうです。

全集ができるまで
「編集者としては、実際に手掛けてみないとなかなかわかりにくいのですが、通常の単行本では得られない編集の妙味が随所にあります」
筆者によると、全何巻とし、そこにどう作家を割り振るかの「基礎設計」も大変重要な作業ということです。

というのも、作家によっては「あの作家と一緒になりたくない」といった人間関係をうまく把握する必要などがあるそう。筆者は「いわば人事です」とも述べています。

最後に
いかがでしたでしょうか。「情報はネットでみるからいーや」と思っている僕達にとって、本の威力を再発見できた一冊だったかと思います。

また、出版社や編集者の「読みやすい本にするための工夫」を知ることで、「工夫の緻密さ」=「体裁」から本の良し悪しを見分けられるようになるといった「ツウ」の視点を身につけることができた体験でした。

2014年11月20日木曜日

「IT業界向けのLINEスタンプ」で使われている用語を解説してみた。

IT業界向けLINEスタンプが先日登場しましたよね。

社内でも割に流行っていて、しかもこのスタンプの送り合いだけでやりとりが完結する場合もある(笑)。

ex)「今日のミーティング『リスケで』」→「それアグリーで」→「レス早いね」とか

どんなやねん、って感じですが、悲しいけどこれがIT業界なのよね。



じゃあ実際、このスタンプで使われている用語がどれだけ人口に膾炙しているかっての気になって、嫁(フリーのWebデザイナー)にきいてみたところ、「ほとんど知らん」って。そんなもんかー。じゃあ、分からん人も多いだろうから解説してみるか、ってことで解説してみます。

この業界に入ってまだ日が浅い方・新卒の方、必見ですよ!

※業界の中では用語を使用について否定的な人もいるのですが、その議論はまた別の機会に。個人的にはあんまり使いすぎるとバカっぽいなー、くらいに思っている感じです。
(まぁ、このスタンプ受けるってことは、そう思っている人が多い証拠のような気がします)


■「リソース空いてる?」
リソース=資源。転じて、目的を達するために役立つ、あるいは必要となる要素という意味。「空いてる?」=作業の(時間的・人的)余裕ある?という理解でいいかと。

■「リソースパツパツだわ」
「作業の余裕」が「パツパツ」=ギリギリかつかつ=「作業の余裕はない」。

■「エビデンスとった?」
エビデンス=証拠。ちゃんと証拠を残した?という意味。ITの世界は(に限らずですが)「言った、言っていない」の水掛け論が多発する業界なので、証拠は大事。修正内容を口頭だけではなく、メールでもらうとかね。その時に「メールでエビデンスもらった?」とか。

■「フルスクラッチ?」
既存のものを一切流用せずにまったく新規に開発すること。

普通は公開されているプログラムの部品などを組み合わせて開発するけど、それが何らかの理由でできない場合は、イチからつくる。死ぬほど大変、かつ、(この作業、本当に必要だろうか?という疑念)に苛まれる開発方法。

■「バッファ持っている?」
バッファとは「元々は物理的な衝撃を吸収して和らげる緩衝器」の意味。転じて、「余裕」みたいなニュアンスで使われる。

1時間でできそうな作業を任された時、正直に「1時間でできます」なんて言ってしまい、やってみたところ想定外なことが多く1時間どころか5時間くらいかかって、相手からの信用を失った、てなことって普通にありますよね。

そんな場合を想定して、「(1時間でできそうだけど万が一のトラブルに備えて)……3時間くらいかかりますね(2時間のバッファを持っている)」と答えておくわけです。

■「ローンチしました」
Launch=立ち上げるという意味から、サービスの「最終リリース」という意味で使われる。

■「そのスキームね」
Scheme=戦略。この場合は、「そのアイデアもあるね」くらいの軽い意味。

■「ジャストアイデアだけど」
「思いつきですが……」。会議の時、何か意見を求められた時、適当に思いついたことをいう時に保険的に使う。「その意見、単なる思いつきだね」と思われないために……。

■「オンスケで!」
「On Schedule」=スケジュール通りですって意味。「My task progress is going on schedule.」という感じで、英語でも伝わるらしいです。便利ですねー。

■「バジェットあるねぇ」
Budget=予算。開発の予算はいつもカツカツで、バジェットが潤沢にあるのは稀。というか、僕はそんなプロジェクト知らない(笑)

■「バグったわ」
BUG=虫。転じて「バグる」=虫が侵入して、仕様書にない異常な動作をする状態。まぁ、これはよくゲームとかでも使いますね。

■「ユーザビリティいいね!
使いやすいね!くらいの意味。でも「ユーザビリティいいね」って言ったほうが、なんとなくプロっぽいでしょ?その程度の話。

余談ですが、例えばアプリを使ってみた時、コンテンツそのものではなく、ユーザビリティについつい目が行ってしまうのがIT業界人のサガ。たまたまダウンロードしたアプリがめちゃくちゃ使いやすいと、同じ業界の人間として嫉妬。

■「デフォルトで」
Default=何も触らない。ニュアンス的に「初期設定」っぽい使われ方で、日常生活でも使われる言葉かと。

■「なる早で」
「なるべく早く」。よっぽどの理由がない限り、エンジニアさんに「なる早」とかいうと、キレられます(そりゃそうです)。

なので、「なるべく早くやって欲しい」と思っていても、必ず相手が今どんなタスクを抱えているかを確認した上で、「具体的に●●時までにお願いします」という感じで仕事を依頼するようにしましょう。

■「リスケでお願いします!」
Rescheduling=スケジュールの再調整。急な仕事が入って、都合がつかなくなった時に、再調整させてください!という時に使います。

■「プライオリティ高いの?」「プライオリティ低いなそれ」
Priority=優先権。仕事は優先順位が大事。目の前の仕事に追われ近視眼的になってしまっている時に言われてハッとする言葉。

■「タスク管理できている?」
そのままですが、このスタンプでは進行管理的がちゃんと出来ている?というニュアンスに近いです。

開発業務では多くの人間が関わるので、どの業務が未着手で、どの業務がすでに終わったか?などの進行状況の管理・把握がめちゃくちゃ大事なんです。その管理・把握がちゃんと出来ているかどうかが、プロジェクトの勘所だったりします。

■「リテラシー低いね」
Literacy=「何らかの表現されたものを適切に理解・解釈・分析・記述し、改めて表現する」的な意味。日常生活でもよく使われるけど、この場合は当然「ITリテラシー」の意味です。

■「モチベーション低いわぁ〜」
Motivation=動機付け。これも普段よく使いますね。

■「それアグリーで!」
Agree=同意。どっちかというと、白黒はっきりさせたいときに使います。会議とかでアチコチ話がとんでしまって「結局どっちなの?」となった時、「アグリー?
」「アグリーで!」という感じで、態度をはっきりさせます。

■「FIXで」
Fix=固定する。転じて、「決定する」。これも白黒はっきり付けたいときに使う言葉。仕事って関わる人間が多いほど、なにか決まっているか?決まっていないか?をちゃんと把握することが重要。「これとこれはFIXだから、進めていい。だけど、これはFIXしてないから、進めてはダメ」とかね。

■「ペンディングで」
Pending=ぶら下がり。転じて、「先送り」という意味。「ミーティング、ペンディングで」は、「ミーティング、先送りで」という感じ。

また「凍結」や「保留」というニュアンスもあり、「この案件、ペンディングで」という時は「この案件、一旦、手を付けないで」的な意味にもなります。そういえば、前の上司は「『P』で」とか言ってた人もいましたねー(笑)

■「ブラッシュアップお願いします」
「ブラシをかけて磨くこと」。そこから、「さらに良くして」とか「詳細詰めて」とかいう意味。「じゃあ、このアイデアをブラッシュアップしていこうか」といった感じで使われます。

■「シズル感あるね」
シズル=「肉とかがジュ~ジュ~焼けて、いかにも『食欲をそそる』感じ」。そこから、「そそるわ〜〜」とか「セクシーだわ〜〜(性的な意味ではなく)」てなところでしょうか。IT用語というよりは、広告用語かな?「シズル感のある写真だね〜=『そそる』写真だね〜」みたいな意味。

■「トンマナOK?」
トンマナ=トーン&マナー=「調子と様式」。クライアントが大切にしている「デザインテイスト」とか「ブランドイメージ」に合っているか?という場合に使われます。これも広告用語だと思う。

■「カニばっているわ」
カニバる=カニバリゼーション。自分の商品・サービスが自社の他の商品・サービスを侵食してしまう「共食い」してしまうこと。「こういうサービスをやりたいけど、既存のサービスとカニばる部分もあるから、そこ考えとかないと」みたいな感じで使われます。

■「フィードバックするね」
フィードバック=反応などの結果を参考にして修正し、より適切なものにしていくこと。「上司から企画書のフィードバックをもらう」=「企画書の修正ポイントを指示してもらう」。時々、「FB」と略す人もいます。FBと書くとFacebookみたいだけど。

■「レス早いね」
レス=Response。反応。転じて、「メールの返信」や「支持した仕事に対しての対応」みたいなニュアンス。「ぜんぜんレスがない」=「ナシのつぶてである」

■「コンスタントに稼ぐね」
Constant=いつも一定している様。「コンスタントに稼ぐね〜」=「定常的に利益上げてるね〜。安定しているね〜」というポジティブな意味。

■「バズるわ!」
バズる=BUZZる。ソーシャル上で話題になること。「このネタ、いまソーシャル上でバスっているね」という感じで使う。

■「ブレストしよう」
ブレインストーミング=集団でアイデアを出し合うことによって相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法。広くアイデアを広げるために、厳密には「意見を否定しない」といったルールがあるようですが、そのルールが守られているところを見たことがない(笑)。

「僕はいまノーアイデアなんだけど、皆でざっくばらんにアイデアを出しながら、形にしていこう」といった多少他力本願なニュアンスが隠れていることに注目。

■「それコミット?」
Commit=引き受ける、とか約束するというメッチャ意味の広い単語。転じて、「やりますってことを意思表明する」というニュアンスだと思って頂ければと。なので「それコミット?」と聞かれた時は、相手は「言質」を取りに来ているわけですね。

■「シェアしとくね」
Share=共有。「シャアしときます」=「共有しておきます」=「つたえておきます」くらいの他愛ない意味。これは単純に横文字に置き換えただけの言葉だな〜。

■「ロジックおかしいよ」
Logic=理屈。「その意見、どういうロジックなの?」=「どういう理屈なの?理由は?」(ちょっと高圧的)。これも単純に横文字に置き換えただけですね。

■「それ宿題として持ち帰ります」
この場合の「宿題」とは、「我々の社内に帰って確認・調査する事柄」くらいのニュアンス。クライアントとの打ち合わせの時に、クライアントから思いもよらない質問・指摘を受けた時に、適当に取り繕わず「宿題として持ち帰ります」と言って、その場をやり過ごします。

■「アウトプットいいね」
この場合の「アウトプット」は「目に見える状態での最終形」。ブレストを重ねた後の「企画書そのもの(体裁・デザインを含める)」だったり、「実際に動くプログラム」だったり。当たり前だけど、どんなに良いアイデアでも「最終形」がヘボだと全く意味ない。「アウトプットコケれば、みなコケる」ということわざもあるくらい(ないか)

■「ハンドリングできてる?」
handling=処理、運用、取り扱い。この場合は、「振り回されずに、ちゃんと主導権持って進めている?」というニュアンス。「クライアント、ハンドリングできてる?」=「クライアントの言うこと・支持することを鵜呑みにせず、ちゃんと調整しながら進めている?」。「あの案件、ハンドリングできてる?」=「あの案件、ちゃんとコントロールしてる?遅延やトラブルになってない?」というくらいの意味。

■「リリースしました」
サイトやサービスが世の中に出た的な意味。

■「インプットした?」
この場合は、「ちゃんとあの人に用件を伝えてある?(伝えてないでしょ?)」というニュアンス。


というわけでガーッと一気に解説しましたが、実際にやってみた感想としては、意外と説明に手こずったセリフもありました……。僕もIT業界に毒されてしまってるんでしょうか(笑)

※上記説明は決して厳密なものではなく、あくまで僕個人の「イメージ」だと捉えてくださいね。また業界・会社によっても微妙にニュアンスが異なる場合があるので、そこはご了承ください!

2014年11月17日月曜日

やっぱ「テレビ」のコンテンツってすごいなぁと。ーちくま新書「TVディレクター」の演出力(高橋弘樹)

こんにちは。最近、メディアとかウェブサービスの勉強を本気でしはじめた僕です。 さて、今日はテレビのはなし。

僕は小さい時からテレビっ子でした。 よく外で遊ばずテレビばかり観てる子っているじゃないですか。僕もそうでしたね。小学校の時は、家帰ったら友達と遊ばずにテレビ観てました。「大岡越前」の再放送とかね。

で、最近はメディアの勉強とかやっているのですが、「テレビのコンテンツ力」ってすごいな、って改めて思うんですよ。

Youtubeで観られているのって、結局TV番組じゃない? 

だって、なんだかんだ言っても、観てて面白いし、何と言っても「視聴者を飽きさせない工夫」が散りばめられている。だからずっとダラダラ見てしまうんですね。

あと、最近はYoutubeとかいわゆる動画サイトも定着してきましたが、その中でも結局観られているのって、テレビのコンテンツじゃないですか(サイトの動画視聴ランキングとかみても上位はやっぱりテレビ番組の転載。著作権的な問題はいったん置いといて)。

 だから、「テレビのコンテンツづくり・ものづくりの現場」ってどんなだろう?と思って手に取ったのが「ちくま新書「TVディレクター」の演出力」という本。今日はその本のなから、個人的に面白いと思ったのを抜粋してまとめます。

抜粋:「TVディレクター」の演出力(高橋弘樹)

たとえば昔から素人が登場する番組ってありますよね、「ダーツの旅」とか。あれって僕は結構好きで、そこそこ数字も取れるらしいです。


TVディレクターの演出術: 物事の魅力を引き出す方法 (ちくま新書) 

んで、僕らみたいな一般人からすると、「じゃあ、素人ばっかり出せば数字も取れるし、面白いんじゃね?」とか思ってしまいますが、もちろんこれは大間違いなわけで。素人を使って、うまく盛り上げ、飽きさせないようにするにはディレクターの演出力が問われるようです。

「素の良さをもっと引き出すための演出法」

・「ポジショントークに気をつける」ー人はテレビの前では演じて喋ってしまう
・「ネガティブなことを言ってみる」ーポジショントークだけにならないようにあえてネガティブなことを振ってみる「それってなんの意味があるんですか?」
・「イベントをしかける」ー感謝の言葉を引き出すために、「感謝の言葉を伝えませんか?」ではなく「あの人に手紙を書いてみませんか?」でやってみる。
・「なぜ?を5回繰り返す」ー深堀り。
・「うんこの魅力すら語れるようにしておく」ー晴れの日には晴れの日の魅力が。雨の日には雨の日の魅力が。

こんな内容の本ですが、個人的に面白いと思ったのは、第九章「テレビがより面白くなる!ツウな見方」の箇所です。

テレビのツウな見方

・「カメラアングル(ローアングル)」や「カメラワーク(撮りおろし)」を見るー取材対象に迫力を持たせる、状況の転換などの演出が込められている
・「ディレクターからの秘密のメッセージ」ー実はディレクターは画の中にメインではない主題を映し込んで、視聴者に語りかける。
ex)ペルーの首都:リマの遺跡に画にヒマワリ→ヒマワリは太陽の花→インカ帝国も太陽が守護神→そんな太陽の遺跡を今でもヒマワリが守るように咲いていることに趣を感じ取ってほしい。
こんな感じで、よく観察すると我々視聴者にとって「面白く」「飽きさせない」工夫や演出がテレビ番組にはめちゃくちゃ散りばめられていて、さらには僕たちはそれにほとんど気づかず、無意識に「おもしろいなー」とか思って観続けてしまうわけです(見方を変えれば、究極の洗脳装置とも言えるわけですが)

読んだ感想としては、「すげー」の一言。「ものづくりのプロの現場」を垣間見た感じです。

また高橋さんというディレクターは、「TVチャンピオン」や「何でも鑑定団」など、予算は少ないがアイデアで個性的な番組を作り続ける「テレ東」のディレクターさん。現場の一線を行くプロのノウハウは、普段の仕事術でも活かせるような気がしました。